相続税申告の準備は、「誰が相続するか」「どんな財産・債務があるか」「どの特例を使うか」に分けると進めやすくなります。税理士へ申告を依頼する場合も、最初からすべてを集め終える必要はありません。手元の資料と未取得の資料を区別して渡せば、次に取り寄せるものを決められます。
注意したいのは、税額を調べるために集める資料のすべてが、税務署への必須添付書類ではないことです。提出が必要な書類や省略できる条件は、特例と提出方法によって変わります。まず戸籍・遺言書の有無、金融機関名、不動産の課税明細、借入先を確認し、相続開始年に対応した国税庁の手引きと照合してください。
家族関係と分け方を確認する資料
| 資料 | 確認する内容 | 主な入手先・確認先 |
|---|---|---|
| 故人と相続人の戸籍関係書類 | 相続人が誰か。故人の出生から死亡までの戸籍など、関係に応じた範囲を確認する | 本籍地の市区町村等 |
| 図形式の法定相続情報一覧図の写し | 法務局が確認した相続関係。申告添付では戸籍に代えて使える場合がある | 法務局 |
| 遺言書、遺産分割協議書 | 誰がどの財産を取得するか | 自宅保管資料、保管先、相続人 |
| マイナンバーの確認資料、本人確認書類 | 申告する人の番号と本人確認 | 各申告者の手元 |
申告に添付する戸籍は、相続開始の日から10日を経過した日以後に作成された、相続人全員を明らかにするものが国税庁の手引きに示されています。図形式の法定相続情報一覧図を使う場合には、子の続柄が実子か養子か分かる記載が必要です。養子がいる場合は、その養子の戸籍謄本または抄本も必要になります。
戸籍や法定相続情報一覧図はコピーによる提出も認められています。ただし、戸籍を集める段階の必要範囲と、税務署へ提出する書類の条件を同じものとして扱わないようにします。
遺産分割協議書は、遺産の分け方について合意した内容を記した書類です。一般の場合、国税庁の手引きでは遺言書・協議書の写しを「提出をお願いしている書類」としています。一方、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使う場合には、適用のための添付書類として確認が必要です。
財産別に集める資料の一覧
次の表は、財産の所在・評価額・取得経緯を確認するための収集用一覧です。すべてを一律に申告書へ添付するという意味ではありません。
| 財産・債務 | 集める資料の例 | 使い道・取り寄せるときの注意 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 金融機関の死亡日現在の残高証明書、通帳、取引履歴、必要な利息資料 | 残高の基準日を死亡日に合わせる。定期預金等では、死亡日に解約したと仮定した利息の確認も必要 |
| 土地・建物 | 市区町村の固定資産税課税明細・評価証明・名寄帳、法務局の登記事項証明書・公図・地積測量図 | 所在地、地番、持分、面積を照合する。課税明細の価格を土地の相続税評価額にそのまま置き換えない |
| 貸している不動産 | 賃貸借契約書、入居状況、家賃の入金記録、敷金の資料 | 誰に、どの部分を貸していたか、債権・債務が残っていないかを確認する |
| 株式・投資信託など | 証券会社の残高証明書、取引報告書、配当関係資料 | 死亡日時点の銘柄・数量を把握する。証明書に載った金額だけで評価が終わるとは限らない |
| 生命保険・死亡退職金 | 保険証券、支払通知、保険料負担の分かる記録、勤務先の支給通知 | 受取人、実際の保険料負担者、支給内容を確認する。死亡保険金が出ない契約も一覧にする |
| 非上場株式・会社への貸付金 | 会社の決算書・申告書、株主名簿、貸付契約・残高資料 | 会社へ早めに依頼する。株式と貸付金を別々に把握する |
| 現金・家財・貴金属など | 財産の一覧、写真、購入資料、必要に応じた査定資料 | 死亡日時点の保有状況を記録する |
| 借入金・未払金 | 借入残高証明、契約書、請求書、領収書 | 故人の債務か、死亡日時点に残っていたかを確認する |
| 葬式費用 | 請求書・領収書、支払日・相手先・内容のメモ | 葬儀関係の支出をまとめ、控除対象かは内容別に確認する |
| 生前贈与・家族名義の財産 | 贈与税申告書控え、相続時精算課税の届出控え、贈与の記録、入出金資料 | 過去の贈与の扱いと、故人の財産が別名義で残っていないかを確認する |
取引履歴を何年分取り寄せるかは、確認する資金移動や贈与の時期で変わります。一律の年数を法定の提出義務として扱わず、まず手元の通帳・記録を確認してから不足期間を依頼すると、重複した取り寄せを減らせます。
特例の資料は、財産一覧ができた段階で追加する
配偶者の税額軽減を使う場合には、配偶者が実際に取得した財産を確認できる書類が必要です。小規模宅地等の特例を使う場合には、対象の土地、取得者、居住・事業の状況を確認する資料が必要になります。協議書で分割した場合には、協議書の写しと、そこに押印した相続人全員の印鑑証明書などを確認します。
住民票等の添付を省略できる場合でも、特例の適用条件を確認しなくてよくなるわけではありません。小規模宅地等の特例の書類・未分割時の手続は「小規模宅地の特例を使う申告書類と遺産分割の期限」で詳しく扱います。
原本・コピー・電子提出を取り違えない
原本は一か所に保管し、確認用のコピーやPDFに「資料名・対象日・取得日」を付けて管理すると、再取得を防げます。ただし、提出の可否は書類ごとの扱いに従います。「相続税はすべてコピーでよい」「すべて原本が必要」とは決めつけられません。銀行の相続手続や登記で求められるものも、相続税申告とは別です。
書面申告で本人確認書類の写しを付ける場合、マイナンバーカードなら表裏両面が必要です。窓口へ提出する本人は、自分の確認書類を提示する方法もあります。e-Taxで申告する場合は、この本人確認書類の提示・写しの提出を省略できますが、マイナンバーの入力自体が不要になるわけではありません。
電子申告では、入力して送信する申告書と、PDF等で提出する添付資料を区別します。集めた紙をすべてPDFにすれば申告できる、という仕組みではありません。
取り寄せは、手元の一覧づくりから始める
- 故人の氏名、死亡日、家族関係を整理し、遺言書と手元の財産資料の所在を確認する。
- 金融機関・不動産・会社などの一覧を作り、取り寄せ先ごとの請求条件を確認する。
- 戸籍等の共通資料を整え、残高証明や会社資料などを順に依頼する。
- 特例を使う見込みが立ったら、その条件を確認する資料を追加する。
- 相続開始年の申告様式・添付書類と、手元の資料を照合する。
2026年中に亡くなった人の申告は、令和8年分用の様式を使います。この年分から様式が変更されているため、前年に保存したひな型をそのまま使わないようにしてください。提出する年だけで様式を選ぶこともできません。
資料の管理欄は「取得済み」「請求中」「未請求」「該当なし」に分けると、家族と税理士の間で不足が伝わります。申告期限が近い場合には、集まるまで連絡を待つのではなく、未取得の資料と見込日も一緒に伝えてください。
※本記事は、作成時の法令および国税庁の公表情報に基づいて作成しています。その後の法改正や制度変更等により、現在の取扱いと異なる場合があります。実際の申告・手続にあたっては、国税庁等の最新情報をご確認ください。

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