相続税の計算方法を一つの事例で理解する

相続税は、自分が受け取った財産にそのまま税率を掛けて求めるものではありません。いったん法定相続分で分けたと仮定して全体の税額を計算し、その総額を実際の取得内容に応じて配分します。この二段階を分けると、計算の流れを追いやすくなります。

用意するのは、相続人の関係、財産の評価額、非課税財産、債務・葬式費用、加算する贈与、実際の分け方が分かる資料です。特例や税額控除がある場合は、その適用条件も先に確かめます。

目次

最初に、各人の「課税価格」を求める

課税価格は、その人の相続税計算の出発点となる金額です。相続・遺贈で取得した財産や相続時精算課税の対象財産を整理し、非課税財産や控除できる債務等、生前贈与加算を反映させます。土地等に適用できる評価上の特例も、条件を確認したうえで計算します。

単なる口座の入金額や、遺産分割協議書に書いた金額と一致するとは限りません。家族名義の財産、死亡保険金、生前贈与の見落としがあると、その後の計算が正しくても税額は変わります。

子二人が異なる割合で取得する例

配偶者はおらず、法定相続人は成人した実子二人とします。財産評価、債務等の整理を済ませた課税価格の合計は7,200万円。子Aが5,400万円、子Bが1,800万円を取得し、加算すべき贈与、2割加算、税額控除はない架空例です。

1.基礎控除を引く

基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。

7,200万円-4,200万円=課税遺産総額3,000万円となります。

2.法定相続分で取得したと仮定する

子二人の法定相続分は各2分の1なので、計算上の取得金額は各1,500万円です。実際の5,400万円・1,800万円という分け方は、この段階では使いません。

国税庁の速算表では、1,000万円超3,000万円以下の区分は税率15%・控除額50万円です。

1,500万円×15%-50万円=175万円

二人分を合計した相続税の総額は350万円です。速算表の控除額50万円は、最初に差し引く基礎控除とは別の数字です。

3.実際の課税価格の割合で配分する

取得者 各人の課税価格の割合 配分した税額
子A 5,400万円÷7,200万円=75% 350万円×75%=262万5,000円
子B 1,800万円÷7,200万円=25% 350万円×25%=87万5,000円

この例には加算・控除がないため、これがそれぞれの納付税額です。実際の申告では、課税価格や法定相続分に応ずる取得金額などの端数処理も、申告書の手引きに従います。

配分した税額に、取得者ごとの加算・控除を反映する

兄弟姉妹や一定の孫などには2割加算が関係します。また、贈与税額控除、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除などは、適用条件と計算順序がそれぞれ異なります。配分した税額がそのまま納付額とは限りません。

配偶者の軽減は「配偶者の税額軽減の条件と申告手続き」、対象者別の加算は「相続税の2割加算は誰にかかる?孫・兄弟姉妹の確認」で扱います。まず申告が必要な金額かを知りたい場合は、基礎控除の記事から確認してください。

計算を見直す際には、「評価・課税価格」「全体の税額」「各人への配分」「加算・控除」のどこが変わったかを分けます。一人の取得額だけを書き換えて、他の人の税額をそのままにしないことが、計算違いを防ぐ手掛かりになります。


※本記事は、作成時の法令および国税庁の公表情報に基づいて作成しています。その後の法改正や制度変更等により、現在の取扱いと異なる場合があります。実際の申告・手続にあたっては、国税庁等の最新情報をご確認ください。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次